今、日本中で「都道府県単位」の「広域化」が始まっています。
過大な施設を統廃合し、ダウンサイジングを図るのは必須です。
しかし「どういうやり方」で進めるのか?が、重要です。
奈良県の広域化の計画は「県域水道一体化」。
ため池や井戸水などの「市町村」のもつ浄水場をほぼすべて廃止し、
「奈良県」の浄水場ばかり、残す方向です。
「各市町村」ではなく「奈良県」の水源を残す事が合理的なのか?の試算すら公開されていません。
国内で広域化の成功事例はありますが、奈良県のやり方はその真逆。
失敗すれば、実質的に元に戻すことはできません。
「奈良県域水道一体化」の主な問題
・市長の参加条件、全部スルー!奈良市民にメリットなし
・水道料金が上がる。効果額さえ言えなくなった。
・将来、水道が民営化される可能性
・奈良県の高いダム水の押しつけ。将来世代にツケを残す
・奈良市の誇り、歴史ある安い合理的な水資源を捨てる
・失敗でも戻れない
どういうことか、順に説明していきます。
①市長が提示した参加条件を、奈良県は全部スルー!
「県域水道一体化」参加の条件として奈良市は以下3つを挙げていましたが、県からの具体的な回答はなく、全く計画にも組み込まれていません。
・全ての市町村が一体化のメリットを受ける
・上下水道一体運営を継続
・下水道事業に対する県負担の拡充
②水道料金が5年に一度上がります。
奈良市でいえば、約20年間、水道料金は値上げされていません。
今後の値上げ予想も7%と軽微です。
しかし、県域水道一体化は水道料金が奈良県一律となり、5年に一度料金値上げが検討される予定。値上げ必須です。
事業主体名 | 料金 改定率 |
料金 改定年度 |
料金(2018年度) (20㎥使用時) (円) |
将来予測値 (20㎥使用時) (円) |
奈良市 | +7% | 2040年度 | 2,678 | 2,861 |
天理市 | +13% | 2035年度 | 3,380 | 3,809 |
生駒市 | +18% | 2025年度 | 3,149 | 3,712 |
大和郡山市 | +18% | 2032年度 | 2,937 | 3,466 |
安堵町 | +19% | 2025年度 | 3,730 | 4,446 |
田原本町 | +19% | 2019年度 | 3,880 | 4,626 |
橿原市 | +21% | 2027年度 | 3,693 | 4,480 |
人口減少時代の水道料金はどうなるのか? 研究結果(2021版)より抜粋
③メリット・効果額さえ、奈良県が言えなくなった。
通常、民営化等の大きな変更があれば「メリット」があると説明されます。
当初、県は686億円の効果額を最大のメリットと説明していましたが、今は「効果額を使わない」と効果額さえ言えなくなっています。
④将来、水道民営化のリスクが高まる。
「県域水道一体化」されると、奈良県の水道は奈良県から「企業団」に移ります。
どうするかを決めるのは「企業団議会」ですが、一般的に企業団議会は年に2度、つまり予算・決算程度の議会しかなく、議会の歯止めもありません。
奈良県職員に、水道に詳しい職員はいなくなります。
参加自治体の首長が企業長となりますが、企業長が「水道民営化したい」と思えば、議会のチェックも、市民が止める手立てもほとんどなく、簡単に民営化することが可能です。
⑤奈良県の高いダム水の押しつけ。将来世代にツケを残す。
実は奈良県、大滝ダムができ、水が余っています。水が売れねば、ダムの支払いが困難です。余ったダム水を市町村に押し付けるために、市町村の持つ水源をやめさせるのではないのか?
そう疑うほど、奈良県からは資料の開示がないままに、市町村の持つ優良な水源・浄水場を廃止する計画です。
⑥奈良市の誇り、歴史ある安い合理的な水資源を捨てる
上の⑤の結果、未来永劫、奈良県内の水源を、ダム水に頼るのか。
長年安価に安定的に使ってきたため池・地下水などの水源を守るのか。捨てるのか。
今まさに、岐路に立っています。
⑦失敗でも戻れない。
「奈良県域水道一体化」されれば、各市町村は水道事業を廃止することになります。
(水道事業の運営には厚労省の認可が必要)
「お試しでやってみる」ことはできないのです。
将来世代に誇るべく地域の水を財産として残すためには、地域ごとにもつ水源の棚卸し、現場レベルでの話し合いが必須です。
そのためにも、奈良県が進めている「県域水道一体化」を止めるしかありません。
ぜひ、お近くの市議会議員に意見を聞いてみてください。
【参考】第1回奈良市県域水道一体化取組事業懇談会配布資料
奈良県域水道一体化の経緯、概要などの資料が掲載されています。