奈良の水道問題を考える市民フォーラム

奈良「県域水道一体化」で地元の浄水場がなくなる。5年に一度水道料金が上がる。一体化の後は民営化?奈良の水道の将来を考えるために個人・団体が集まり活動している市民団体「奈良の水道問題を考える市民フォーラム」のブログです。

失敗でも戻れない。将来世代にツケを残す「奈良県域水道一体化」の主な問題点

今、日本中で「都道府県単位」の「広域化」が始まっています。

過大な施設を統廃合し、ダウンサイジングを図るのは必須です。

しかし「どういうやり方」で進めるのか?が、重要です。

 

奈良県の広域化の計画は「県域水道一体化」。

ため池や井戸水などの「市町村」のもつ浄水場をほぼすべて廃止し、
奈良県」の浄水場ばかり、残す方向です。


「各市町村」ではなく「奈良県」の水源を残す事が合理的なのか?の試算すら公開されていません。

 

国内で広域化の成功事例はありますが、奈良県のやり方はその真逆。

失敗すれば、実質的に元に戻すことはできません。

 

奈良県域水道一体化」の主な問題

・市長の参加条件、全部スルー!奈良市民にメリットなし
・水道料金が上がる。効果額さえ言えなくなった。
・将来、水道が民営化される可能性
奈良県の高いダム水の押しつけ。将来世代にツケを残す
奈良市の誇り、歴史ある安い合理的な水資源を捨てる
・失敗でも戻れない

どういうことか、順に説明していきます。

①市長が提示した参加条件を、奈良県は全部スルー!

 「県域水道一体化」参加の条件として奈良市は以下3つを挙げていましたが、県からの具体的な回答はなく、全く計画にも組み込まれていません。

 ・全ての市町村が一体化のメリットを受ける

 ・上下水道一体運営を継続

 ・下水道事業に対する県負担の拡充

 

②水道料金が5年に一度上がります。

 奈良市でいえば、約20年間、水道料金は値上げされていません。

 今後の値上げ予想も7%と軽微です。

 しかし、県域水道一体化は水道料金が奈良県一律となり、5年に一度料金値上げが検討される予定。値上げ必須です。

 

www.ey.com

事業主体名 料金
改定率
料金
改定年度
料金(2018年度)
(20㎥使用時)
(円)
将来予測値
(20㎥使用時)
(円)
奈良市 +7% 2040年度 2,678 2,861
天理市 +13% 2035年 3,380 3,809
生駒市 +18% 2025年度 3,149 3,712
大和郡山市 +18% 2032年 2,937 3,466
安堵町 +19% 2025年度 3,730 4,446
田原本町 +19% 2019年度 3,880 4,626
橿原市 +21% 2027年度 3,693 4,480

人口減少時代の水道料金はどうなるのか? 研究結果(2021版)より抜粋

③メリット・効果額さえ、奈良県が言えなくなった。

 通常、民営化等の大きな変更があれば「メリット」があると説明されます。

 当初、県は686億円の効果額を最大のメリットと説明していましたが、今は「効果額を使わない」と効果額さえ言えなくなっています

 

④将来、水道民営化のリスクが高まる。

 「県域水道一体化」されると、奈良県の水道は奈良県から「企業団」に移ります。

どうするかを決めるのは「企業団議会」ですが、一般的に企業団議会は年に2度、つまり予算・決算程度の議会しかなく、議会の歯止めもありません。

奈良県職員に、水道に詳しい職員はいなくなります。

参加自治体の首長が企業長となりますが、企業長が「水道民営化したい」と思えば、議会のチェックも、市民が止める手立てもほとんどなく、簡単に民営化することが可能です。


奈良県の高いダム水の押しつけ。将来世代にツケを残す。

実は奈良県、大滝ダムができ、水が余っています。水が売れねば、ダムの支払いが困難です。余ったダム水を市町村に押し付けるために、市町村の持つ水源をやめさせるのではないのか?

そう疑うほど、奈良県からは資料の開示がないままに、市町村の持つ優良な水源・浄水場を廃止する計画です。

 

奈良市の誇り、歴史ある安い合理的な水資源を捨てる

上の⑤の結果、未来永劫、奈良県内の水源を、ダム水に頼るのか。

長年安価に安定的に使ってきたため池・地下水などの水源を守るのか。捨てるのか。

今まさに、岐路に立っています。

 

⑦失敗でも戻れない。

奈良県域水道一体化」されれば、各市町村は水道事業を廃止することになります。

(水道事業の運営には厚労省の認可が必要)

「お試しでやってみる」ことはできないのです。

 

将来世代に誇るべく地域の水を財産として残すためには、地域ごとにもつ水源の棚卸し、現場レベルでの話し合いが必須です。

そのためにも、奈良県が進めている「県域水道一体化」を止めるしかありません。

 

ぜひ、お近くの市議会議員に意見を聞いてみてください。

 

奈良阪町に、100年前(1922年)に建造された水道施設・計量器室。 赤レンガ造りで土木学会選奨の土木遺産奈良市水道の象徴的存在です。

 



 

【参考】第1回奈良市県域水道一体化取組事業懇談会配布資料

奈良県域水道一体化の経緯、概要などの資料が掲載されています。

h2o.nara.nara.jp

 

【個人署名を集めています】奈良の水を守って!民営化への道にNO!奈良市が県域水道一体化に参加しないことを求めます。

地下水などで安定的に安価に、奈良県内市町村が運用してきた浄水場がほぼ廃止され、ほとんどがダム水源の県水になる、と知っていますか?

でも、なぜそうなるのか?を検討する資料すら公開されていない。

5年に一度値上げが予定され、値上げが必須。だけどその試算があっているのかも不透明。

奈良市長の要望も、県はほぼスルー。

県単位の水道広域化は、水道民営化への近道でもあります。

 

しかし2022年11月、各市町村は態度表明する予定。

そこで参加を表明すれば、2023年2月に基本協定が締結され、元に戻ることはできなくなります。(各市町村の水道事業を廃止するため)

 

今、私たちは署名を集めています。

2020年12月にスタートしたこの署名は、2021年1月22日1588筆、2021年5月28日2845筆(計4433筆)、2022年2月28日893筆(計5326筆)を、奈良市に提出しました。

11月、奈良市長が意思表示をする前に、1万人を目標とし集めています。

 

奈良県全体の問題ではありますが、特に奈良市奈良県の3割を占めており、水道一体化に奈良市なしだと、大きく影響することから重点を置いています。

(が、他地域でも実施してくださり、連携したいと考えています)

 

「全国からこれだけ注目を集めてるんだよ」
と、奈良市が加わらない後押しにすべく、奈良市民に限らず、全国の方に署名いただけるオンライン署名をスタートしました。(それだけ奈良県の計画がずさんなんです…)

chng.it

 

ぜひ皆さまのご協力を、よろしくお願い致します。

 

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奈良市長   仲 川 げん 様    
2022年  月  日

奈良市が県域水道一体化に参加しないことを求める請願書

請願主旨


奈良県は県域水道一体化の名の下に、県営水道と各市町村の水道事業体を一つにまとめる計画をすすめており、奈良市はそのまとめ役を果たすことを宣言し、すでに昨年1月に県内の関係市町村長が覚書に調印しました。

覚書では令和6年度に企業団を立上げ、令和7年度から事業を始める計画です。この計画では、奈良市の給水量が全体の3割を占めるため、奈良市の参加の是非がカギを握ります。


当局が説明する財政試算で見ると21年間据え置かれてきた奈良市の水道料金は、この統合で3割近い値上げになり、市民の暮らしと営業に追い打ちをかける大問題です。

ただ、覚書締結時に示された将来の財政試算は、その試算方法が市町村によって違いのあることがわかり、県はこの試算の見直しを進めているといわれており、この一体化計画の根本が問われる事態になっています。


さらに浄水場は、奈良市の木津浄水場をはじめ広域対象市町村の多くの浄水場を廃止し、3か所に集約する計画であり、近年頻発している記録破りの豪雨や地震等で被災した場合の被害が広範囲に及ぶことが懸念されます。


またこの一体化は国の方針で、将来は水道の民営化が計画されており、その動きが全国に広がってきています。命の飲み水を民間に任せることは認めることはできません。

 

請願事項
奈良市が県域水道一体化に参加しないことを求めます。

    
    
    連絡先:奈良市の水道問題を考える会
       奈良市の水道問題を考える市民フォーラム
                    宛先:naracitizenforum@gmail.com

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署名用紙のダウンロードはこちらから


       

え~っ!「100年ブランドの奈良市水道」がなくなるの?!~代表のあいさつ~

2022年4月開催されたシンポジウム時の「奈良の水道問題を考える市民フォーラム」代表 八木の挨拶をご紹介いたします。

 

え~っ!「100年ブランドの奈良市水道」がなくなるの?!
~県域水道一体化は水道料金値上げと民営化への道~

今日は奈良市の水道問題を考える講演・学習集会に、日曜日の朝からお集まりいただいてありがとうございます。市議さんにも多数ご出席いただき、ありがとうございます。


思えば奈良市の水道事業は大正時代に始まり、今年でちょうど百年を迎えています。

 

それで先日2月堂の北東の山林にある創業期の旧配水池施設を観に行ってきました。堂々たるコンクリート建築物だったです。

今でこそ水道の蛇口さえ捻れば清浄な水が出てくるものと普通奈良市民は考えていますが、そんな風になるには先人たちの大変な苦労と努力があったものと思われます。先人たちに深く感謝します。

またそうした努力はただに奈良の人たちにとどまらず、布目ダムのように水源地の山添村の人たちの犠牲や森林保全とクリーン活動による水質保全にもよってきたのだということにも深く感謝したいと思います。

 

奈良市の主たる浄水場は、市街地の東北の奥の高台にある緑が丘浄水場ですが、昨夏にそこの職員さんから伺った話では、源水の水質がいいので薬品処理がいらないことと、立地がいいので奈良市の隅々まで動力を使わないで自然導水で安価に水を送れるという特徴を誇らしげに語っておられました。浅野さんに言わせれば100年の水道ブランドです。


 このような奈良市の水道事業がいきなり奈良市政と奈良市民の手から取り上げられ、企業団とかいう基礎自治体の上に立つ県の特別な事業体に移され、市行政や市民の目と

手の届かないところにいってしまう。いわば住民の命に関わる水が住民自治の関与できない遠くに行ってしまう、そういう垂直的統合としての奈良県域水道一体化に、多くの市民は大いなる危うさを感じています。市民の信頼と愛着を得てきた奈良市水道がなくなってしまう・・・?!


しかもこれは2018年の水道法改正が道筋を開いた広域化と民営化の線に沿ったものであり、広域化は次には民営化とつながってるのでは?という危惧を多数の市民が抱いています。実際、両者は命の保障と住民自治ではなく、営利第一という発想では共通しています。


 それに加えて大滝ダムの問題など、県水道の様々な失政のつけや構造的赤字経営エリアの埋め合わせの負担が奈良市に負わせられて水道料金の値上げをもたらすのではという問題です。

2006年以来一度も値上げなしに健全経営を誇ってきた奈良市水道が、県域一体化によって5年ごとに見直され、値上げが推進されていくということです。

 

また浄水場の削減が災害時の対応を脆弱なものにして和歌山のような断水をもたらすのでは・・・と様々な疑問と危惧が寄せられています。

なぜ自治体・住民間での熟議が重ねられないで、県は垂直統合を急ぐのかとの不信が広がっています。


 こういう時に県と市との間での考えや事実認識の相違が露わとなり、亀裂が生み出されています。3月市議会でも大きな論点になり、市議の関心も高まっています。それは今日の集まりへのご出席を市議の各会派にお願いで回った時も痛感しました。

 

3会派が反対を明言され、迷っていると率直に吐露された会派もありました。県と市の亀裂が報道されて市民の関心も盛り上がってきています。

水道事業についてこんなにも関心をよせ、考え、議論するということは過去そんなになかったことではないでしょうか。

 

今こそ、命の水を市政と住民の手で守り、住民自身の問題として関わっていくそういう時ではないでしょうか。住民自治としての水道自治を守り育てる、そのための出発点として、本日の学習集会を位置づけたいと思います。


 県域水道一体化の動きは、2022年11月の協議会で企業団設立のための基本計画協定案が決められ、2023年3月の各市町村議会での議決を経て法定協議会へと移行し、2023年度中に企業団を設立するという道筋と表明されています。

 

奈良市長はこの2022年11月までに市としての態度を決めると言っています。

この11月までが決定的なヤマ場となります。

 

この時までに私たちは市民と市議会の多数意志を創っていくことが求められます。そのためにどうしていくか。私は訴えます。

 

署名をさらに大規模に広げると同時に、奈良市の各地域で市民と市議との学習懇談会を繰り広げようと。各公民館単位で地域の人たちが集まり、地元の市議さんたちをお呼びして、膝を交えて、お互いに報告し合い、意見を言い合い、学び合い、議論し合う、そういうものが渦のように広がっていけば、それは市長や市議会を動かし、市政を動かしていく力になるでしょう。

 

それこそが県の垂直的広域統合とは対極の、水道自治の姿だと言えるでしょう。どうか皆さん、頑張りましょう。

 

(2022年3月8日奈良市議会傍聴後の市役所前昼休み市民集会の様子)