奈良の水道問題を考える市民フォーラム

奈良「県域水道一体化」で地元の浄水場がなくなる。5年に一度水道料金が上がる。一体化の後は民営化?奈良の水道の将来を考えるために個人・団体が集まり活動している市民団体「奈良の水道問題を考える市民フォーラム」のブログです。

慎重な懇談会での議論とNHKニュースが真逆の報道。どう聞けば、そんなまとめが出るのか?~第4回懇談会傍聴報告~

奈良県の県域水道一体化を議論する懇談会の第4回が開催されました。

第3回で水道料金では奈良市にメリットがないと判明

第3回と同様に第4回も、慎重な意見が大勢を占めました。

 

事務局からの説明ポイントはこんな感じ。

■人材面

奈良市150人の職員のうち、20人が企業団本部に従事。(つまり130人体制へと減る)

加えて、他市町村の欠員などの応援などが発生するのではないか。

 

■施設面

水源から緑ヶ丘浄水場への導水管(166億円)の複線化の開始を、早めることができる。

但し、バックアップ水源でもある木津浄水場は廃止。

 

■費用負担

料金統一した場合、奈良市は30年間で275億円、他都市の負担することとなる。

奈良市民一人当たり、年間約3,000円)

 

■広域化の手法

さまざまな広域化の手法があるのに、一気に事業統合するのか。

セグメント会計というやり方もある。

 

これらについて、委員からの意見は…

( )内は筆者コメント

 

導水管の複線化は必要なら、一体化せずとも可能と考える」

(確かに、30年間で275億円他都市分を負担するなら、166億円の導水管のほうが安いですよね)

「相互扶助という考えは美しい。しかし、相互扶助に賛成の市民と反対の市民との分断を生む。

「市町村ごとの凸凹をだれがどう穴埋めするのか。企業団になると国の財政支援(国が補助する費用の一つ「高料金対策費」交付税措置)がなくなる

「セグメント会計になると同じ効果と書かれると、セグメントの方向で進めよう、みたいな資料に見えるが、違いますよね?」

セグメント会計は一体化の中のステップであり、ずっと続くとは限らない。企業団議会で奈良市は多数派でない。他市町村がNOと言えば、終わりだ」

「広域化の手法はいろいろあるのに、手法ごとのメリットなど比較を県が出していない。さまざまな選択肢を出すべき

「ほとんどの市民が知らない。きちんと市民に説明をすべきだ」

「一体化に参加するかしないかの、2択をせまる県はおかしい。県への不信感が出てきた。」

 

奈良市からいろいろ県に提案していると思うが、県の対応は?」

という質問に対し、仲川市長は

県に提案しても、検討するという回答ももらえていない」との回答。

 

主だった委員のコメントはこんな感じで、慎重意見多数としか言いようがない状態でした。

なのに…本日8/4のNHKニュースでは、「一体化を進めるべきだ」という議論だとまとめられています。

 

NHK奈良】水道事業一体化構想 仲川市長“県の負担増などあれば参加”

 

一部抜粋→懇談会の委員からは、この案も含めて、今後、一体化に向けた議論を進めるべきだという意見が相次ぎました。

懇談会のあと仲川市長は、「県の計画では奈良市だけ負担が増えることになる」などと述べたうえで、県の負担を増やしたり、事業の統合後、水道料金の移行期間を設けたりするなどの対応がとられるのであれば、構想に参加できるという考えを示しました。

www3.nhk.or.jp

 

動画で仲川市長は、

「今のプランのままでは、奈良市だけが非常に負担が大きくなる。どうすれば安定して安心できる水道を末永く続けていけるのか。公共サービスの一町一番地の議論をしている。」と言っています。

参加すると市長は言ってないのですが、本当に言ったのでしょうか?

懇談会での雰囲気と真逆ですが??

あの懇談会直後に、市長が参加できると言う気がしないのですが…。

傍聴したメンバーからも異論噴出。

 

NHK、どうしたのでしょうか。ナゾすぎます。

 

奈良市県域水道一体化取組事業懇談会の奈良市の資料などは,後日公開されます。

 

次回は8月31日を予定されており、2週間ほど前に、次回懇談会の時間・場所が奈良市HPに公開されます。

 

 

8/4開催、奈良市が検証する、県域水道一体化の懇談会を傍聴しよう

奈良県の試算が正しいのか?

奈良市民にとってメリットはあるのか?

奈良県域水道一体化について、奈良市有識者・市民代表・議員とともに議論している懇談会が、

8月4日(木)午前10時00分から午前12時00分頃まで
 
場所は、 奈良ロイヤルホテル 鳳凰の間 

で開催されます。

申込は不要。当日受付に行くだけでOKです。

h2o.nara.nara.jp

 

たくさんの市民が興味関心あることを表すためにも

どういった中身なのかを知るためにも、ぜひ傍聴してください。

その次は、8/31で調整しているとか。

詳細は、奈良市HPに2週間ほど前に告知されます。

 

またこれまでの議論、資料も公開されているので、ぜひチェックしてみてください。

 

前回の傍聴記録は ↓ からご覧ください!

奈良市の水道料金は、県内で2番目に高くなる!奈良市民のメリットは?第3回懇談会の傍聴報告 - 奈良の水道問題を考える市民フォーラム

奈良市の水道料金は、県内で2番目に高くなる!奈良市民のメリットは?第3回懇談会の傍聴報告

2022年7月12日、奈良市役所において、第3回 奈良市県域水道一体化取組事業懇談会が開催され、活発な議論がされました。

 

奈良県がシミュレーションに使った先行団体の企業団の実際の数字から、奈良市で算出したところ、奈良市単独のほうが水道料金は上がらないことも分かりました。

(つまり、シミュレーションは算定基準次第でいくらでも上振れも下振れもする。何より、奈良県の設定条件があまりに甘くて驚きました…)

 

奈良市奈良市民にとってメリットがなければ参加しない」と明言してきましたが、今回の議論を受け、奈良市仲川げん氏からは
奈良市が圧倒的に得をすることはないということは(懇談会委員の)共通認識になった」
「消防の広域化も、市町村だけではうまく行っていない。県からの支援がなければ困難だ」
といった発言もでました。

 

維新の大西淳文委員からは別途資料が出され、「下水道は統一料金となっており、奈良市は割り勘負けしている。実際の費用以上の負担をしているのは奈良県だけだ」という情報提供もされました。

 

奈良市が入らない場合の検討を奈良県がしていない」ことに驚き、

奈良県は、奈良市の協力を得る姿勢がない」という委員も。

 

座長の浦上拓也氏(近畿大学教授)からは
「水道は全員で支えるもの。負担出来るものが負担する内部補助で成り立つ仕組み。そして、奈良市民は奈良県民でもある」
とし奈良県全体を、奈良市は支えるべきではないかという問題提起がされました。続けて下山明委員(大阪経済大学教授)からは
「料金では奈良市が得をしないのはその通り。しかし、過度の負担でないのなら、奈良市民から理解を得られるか。人口減少の中、統合で運営体制はどうなるのか、投資できるかなど優先順位を決めるべき」

といった、これまで懇談会の議論が、水道料金や投資額、シミュレーションなどに集中されてきたことをうけ、
持続可能な安定・安全の水道、事故対応や復旧、施設更新、運営体制など、統合した場合と単独経営した場合のメリット・デメリットを検討しないと議論・判断できない、との委員の発言が相次ぎ、今後の議論はその方向でされると思われます。

 

今回の主な議題は

①建設投資額が水道事業に与える影響

奈良県統合シミュレーションの再整理

…統合しないほうが安いんじゃない?という奈良市のシミュレーション。先行団体の当初計画から委託費10%削減を採用して算定してたけど、奈良市が聞いてみたら「削減できた費用はない」と回答…など、奈良県のシミュレーションがあまりにもあまいと判明。

③県域水道一体化に伴う奈良市民への影響

奈良県で水道料金を統一して、下水道料金を加えたら、県内7番目に安い水道料金だった奈良市は、2番目に高くなる!(下水道料金は水道料金と一緒に徴収されるが、この一体化では下水道は対象外)

奈良県水道用水供給事業

奈良県が市町村に卸す水の単価がもうけ過ぎ。結果、奈良県は潤沢な資金(流動比率は類似団体の約2倍)を持っている!

の4点。

 

奈良市県域水道一体化取組事業 懇談会の議事録、資料は以下奈良市水道局のリンクからご覧いただけます。

水道事業のご紹介 | 奈良市企業局

 

次回の第4回懇談会は、2022年8月4日で予定されています。

市民の興味関心が高まっていることを知らせるためにも、ぜひ多くの市民が傍聴されるよう呼びかけます。

 

奈良市が県域水道一体化に参加しないことを求める個人署名はこちらから↓あつめています。

www.change.org

「奈良県域水道一体化に参加しないで」葛城市で区長会が市議会に訴え&慎重審議を求める市民団体の請願が全会一致で採択。

2025年の統合と同時にいきなり、
奈良県の水道事業を一つにし、料金統一される、奈良県域水道一体化

現在の奈良県内の水道料金は、2倍ほどの格差があります。
それをいきなり料金統一するため、「得をする自治体」と「損をする自治体」が出てきます。

一体化後の統一料金よりも、安い水道料金で設定していたのが、葛城市と大淀町

当面は料金統一しないと奈良県は言いますが、将来的には統一されます。

 

一体化すれば、料金を決めるのは企業団に変わります。


水道料金だけでなく水源地をどうするのかも、今後、葛城市では決められなくなります。


「市民に説明責任を果たし、市民の意見を聴取する」
よう求めた市民団体「葛城市の水道を守る会」の請願を全会一致で採択。

 

voiceofnara.jp


さらに44区ある葛城市の区長会が「県域水道一体化への不参加」を要請

voiceofnara.jp

 

これらの訴えを、葛城市長・葛城市議会はどう対応するでしょうか。

大注目です。

 

奈良市議会で質問はじまる

水道関係の質問予定

 

明日より、奈良市議会で代表質問や一般質問が始まります。

水道についての質問予定者を掲載します。

ネットでも視聴可。

ぜひお聞きください。

 

「奈良県域水道一体化」ってどんな計画?奈良の水はどうなるの?

奈良県の水道広域化=「県域水道一体化」は、突き抜けた広域化

ステップも踏まず「経営」も「事業」も、一気に「一体化(統合)」。

奈良県内の浄水場も、一気に「廃止」を決定。

大阪広域水道企業団が長年目標に掲げつつも、目標年度すら定まっていない「水道料金一本化」も、奈良県は「統合と同時」。

しかも、県の検討資料が、ほとんど公開されていないという不透明な中で、進んでいるのが特徴的です。(公開しないのは、都合が悪いからなんでしょうか?)

 

奈良県の目指す「県域水道一体化」のポイントは

①事業統合

②水道料金の一本化

の2つでしょう。

https://h2o.nara.nara.jp/file_library/376074883.pdf

1,事業統合

水道広域化にも、ステップがあります。

施設の共同化→管理の一体化→経営の一体化→事業統合、のステップ。

つまり、事業統合は最終形です。

事業統合の中でも、料金統一は最難関ゴールと言えるでしょう。

お隣の大阪府では2011年から企業団になりましたが、事業統合は各自治体が希望した時期に少しづつの参加(まだ過半数は事業統合していない)。
料金統一は目標にしつつも時期未定の状況。

理由は、置かれた状況が違い過ぎて、合意形成が困難だからです。

なのに、奈良県は一足飛びに、事業統合&料金統一しようとしているのです。

 

今回の事業統合(垂直統合)は、奈良県の用水供給事業、各市町村の水道事業をすべて、一つの事業として実施するため、

浄水場などの施設整備の合理化がしやすい」特徴があります。

 

そのため、黄色エリアの12浄水場は、桜井・御所(県水)、緑ヶ丘(奈良市)の3つを残し、他はすべて廃止される予定です。

浄水場の段階的統廃合(案)イメージ

失う浄水場は、以下の9浄水場

奈良市 木津
天理市 豊井・杣之内
桜井市 外山
生駒市 真弓・山崎
葛城市 竹内・兵家・新庄

 

つまり、井戸、ため池、漂流水といった、昔から使ってきた水源も全て捨てることになります。

しかし、

なぜこの3つを残すのか。その優位性は?

他すべて、廃止する必要があるのか?

合理的な説明は一切ありません。

(断層があるのに、災害時本当に大丈夫なんでしょうか…?)

 

また、水道事業に使われる資産(現金預金まで含む)は、企業団にすべて無償譲渡されることも留意したい点です。

 

2,水道料金一本化

現在の奈良県内の水道料金は、2倍ほどの格差があります。
(市町村運営のため、水源等の条件により市町村ごとに料金が異なる)

それを、一気に一緒にするのです。

多くの市町村にメリットを出そうとすれば、安いほうに近づける必要があります。

が、その財源はどこから?

そもそも無理があるのです。

5年に一度、料金値上げを前提とした「料金水準の見直し」予定です。

つまり統合後、必ず5年に一度、水道料金は上がります。

まかなえない減収は、内部留保から出すしかありませんが、大丈夫でしょうか…?

財政運営ルールの方向性(案) 水道料金

ちなみに、当初から料金値下げのメリットがないのが、大淀町と葛城市です。

この2市は、統合で一本化すると料金値上げになってしまうため、

「一定期間、異なる水道料金水準」となります。が、あくまで一定期間。将来どうなるかはわかりません。

 

当然、奈良市奈良県でもありますから、奈良県全体のことも考えねばなりません。

が、奈良県は、広域化事業分のみ、統合後の10年間の財政措置するだけです。

奈良県の水道事業は、企業団という特別地方公共団体という、県とは全く別組織に移ります。

同時に、奈良県の水道局はなくなるでしょう。(大阪府の水道は、健康医療部が担当)

 

つまり、奈良県全体を考えるべき奈良県に、水道のノウハウを持った職員は皆無になります。

 

奈良全体の、将来世代の水道を考えた時、

今の「奈良県域水道一体化」がベストでしょうか?

もっと良いやり方があるのではないでしょうか。

奈良「県域水道一体化」の経緯・スケジュール

「基本計画」も「基本協定」も示されない中、「奈良県域水道一体化」は進められています。

奈良県が出す数字が本当なのか?

2022年4月に奈良県が「新シミュレーション」を発表しましたが、

「算出根拠データ」の提出すらない状況です。

(そのため、奈良市は今、検証を行っています。根拠の数字も出さず信頼せよ、というのでは、うまく行くものもうまく行かないのでは…?)

https://h2o.nara.nara.jp/file_library/582155659.pdf

 

当初、2026年統合から10年以内としていた事業統合(料金統一)も

2026年の統合当初からと変わり、

2025年に統合へとどんどん前倒し、変わっています。

 

奈良市からの3つの課題も「県からの具体的な回答はない※」ままです。

 ・全ての市町村が一体化のメリットを受ける
 ・上下水道一体運営を継続
 ・下水道事業に対する県負担の拡充

※(懇談会第1回での奈良市の回答)

 

2017年10月の水道サミット以降、検討会を立ち上げ

2019年「新県域水道ビジョン」を策定

2021年1月 「水道事業等の統合に関する覚書」締結
奈良県、県内市町村(大和郡山市を除く)、奈良広域水質検査センター組合が参加

 

今後は、

2022年11月第3回協議会には、基本計画案・基本協定案が出され、

2023年2月に「基本協定」を締結すれば、議論の場は市町村議会から「法定協議会

」へ移行します。

そうなると、実質的に止めることは困難となります。

 

11月の第3回協議会で、

市町村の首長が「参加しない」と表明せねば間に合いません。

https://h2o.nara.nara.jp/file_library/376074883.pdf

 

私たちは奈良市を中心に活動しますが、ぜひ、奈良県内でも広げていただければと思います。

 

奈良市の方はぜひ、署名集めにご協力のほどよろしくお願いいたします。