奈良県の水道広域化=「県域水道一体化」は、突き抜けた広域化。
ステップも踏まず「経営」も「事業」も、一気に「一体化(統合)」。
大阪広域水道企業団が長年目標に掲げつつも、目標年度すら定まっていない「水道料金一本化」も、奈良県は「統合と同時」。
しかも、県の検討資料が、ほとんど公開されていないという不透明な中で、進んでいるのが特徴的です。(公開しないのは、都合が悪いからなんでしょうか?)
奈良県の目指す「県域水道一体化」のポイントは
①事業統合
②水道料金の一本化
の2つでしょう。
1,事業統合
水道広域化にも、ステップがあります。
施設の共同化→管理の一体化→経営の一体化→事業統合、のステップ。
つまり、事業統合は最終形です。
事業統合の中でも、料金統一は最難関ゴールと言えるでしょう。
お隣の大阪府では2011年から企業団になりましたが、事業統合は各自治体が希望した時期に少しづつの参加(まだ過半数は事業統合していない)。
料金統一は目標にしつつも時期未定の状況。
理由は、置かれた状況が違い過ぎて、合意形成が困難だからです。
なのに、奈良県は一足飛びに、事業統合&料金統一しようとしているのです。
今回の事業統合(垂直統合)は、奈良県の用水供給事業、各市町村の水道事業をすべて、一つの事業として実施するため、
「浄水場などの施設整備の合理化がしやすい」特徴があります。
そのため、黄色エリアの12浄水場は、桜井・御所(県水)、緑ヶ丘(奈良市)の3つを残し、他はすべて廃止される予定です。
奈良市 木津
天理市 豊井・杣之内
桜井市 外山
生駒市 真弓・山崎
葛城市 竹内・兵家・新庄
つまり、井戸、ため池、漂流水といった、昔から使ってきた水源も全て捨てることになります。
しかし、
なぜこの3つを残すのか。その優位性は?
他すべて、廃止する必要があるのか?
合理的な説明は一切ありません。
(断層があるのに、災害時本当に大丈夫なんでしょうか…?)
また、水道事業に使われる資産(現金預金まで含む)は、企業団にすべて無償譲渡されることも留意したい点です。
2,水道料金一本化
現在の奈良県内の水道料金は、2倍ほどの格差があります。
(市町村運営のため、水源等の条件により市町村ごとに料金が異なる)
それを、一気に一緒にするのです。
多くの市町村にメリットを出そうとすれば、安いほうに近づける必要があります。
が、その財源はどこから?
そもそも無理があるのです。
5年に一度、料金値上げを前提とした「料金水準の見直し」予定です。
つまり統合後、必ず5年に一度、水道料金は上がります。
まかなえない減収は、内部留保から出すしかありませんが、大丈夫でしょうか…?
ちなみに、当初から料金値下げのメリットがないのが、大淀町と葛城市です。
この2市は、統合で一本化すると料金値上げになってしまうため、
「一定期間、異なる水道料金水準」となります。が、あくまで一定期間。将来どうなるかはわかりません。
当然、奈良市は奈良県でもありますから、奈良県全体のことも考えねばなりません。
が、奈良県は、広域化事業分のみ、統合後の10年間の財政措置するだけです。
奈良県の水道事業は、企業団という特別地方公共団体という、県とは全く別組織に移ります。
同時に、奈良県の水道局はなくなるでしょう。(大阪府の水道は、健康医療部が担当)
つまり、奈良県全体を考えるべき奈良県に、水道のノウハウを持った職員は皆無になります。
奈良全体の、将来世代の水道を考えた時、
今の「奈良県域水道一体化」がベストでしょうか?
もっと良いやり方があるのではないでしょうか。